女性鍼灸師が解説!婦人科系疾患による下腹部痛と鍼灸治療

近年は、出産年齢の高齢化や仕事・家庭でのストレス、生活習慣の乱れなどが影響し、婦人科系の不調に悩む女性が増えています。
生理痛も婦人科系疾患のひとつで、下腹部の痛みとして現れることが多くあります。
この記事では、婦人科系疾患による下腹部痛の原因や、東洋医学の考え方「瘀血(おけつ)」、そして下腹部痛に効くツボや鍼灸による改善方法について解説します。
もくじ
下腹部痛を起こしやすい婦人科系疾患
婦人科系疾患にはいろいろあります。
- 子宮内膜症
- 子宮筋腫
- 月経困難症
- 月経前症候群(PMS)
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
- 卵巣嚢腫
- 子宮頸がん・子宮体がん
- 卵巣がん
- 更年期障害
下腹部に症状が出やすいものを挙げましたが、このほかにもまだあります。
早期発見であれば薬や比較的負担の少ない手術で治る場合もありますが、仕事や家庭の事情で定期健診が受けられず、病気の発見が遅れて症状が進行することもあります。
下腹部痛が起こる仕組みとホルモンの関係
女性の下腹部には、腸や膀胱に加えて卵巣・卵管・子宮といった女性特有の臓器があります。
これらの臓器に病気があると、その部位に限局した強い痛みが出ることがあります。
一方で、臓器に明らかな病変がなくても女性ホルモンの変化によって痛みが起こる場合があります。
例えば、生理前にお腹が張る・痛む、排卵時に下腹部がチクチクするなどがその代表例です。
また、更年期に差し掛かるとホルモンバランスが乱れ、婦人科疾患がない場合でも下腹部の違和感や痛みを感じることがあります。
痛みの感じ方は人それぞれで、鈍い痛み・刺すような鋭い痛み・弱いけれど一日中続く痛みなど、症状には大きな個人差があります。
東洋医学で考える「瘀血(おけつ)」と下腹部の痛み
東洋医学では「瘀血(おけつ)」という言葉があり、これは血液の流れが悪くなって滞っている状態を指します。
普段はスムーズに流れている血液も、体の冷えやストレス、運動不足などが原因で流れが悪くなると、瘀血が起こると考えられます。
婦人科系の不調を抱えている方は、この「瘀血」が痛みや張り感の原因のひとつになっていることが多いです。
下腹部には、長くて太い血管がたくさん集まっています。
血液が滞ると、酸素や栄養が十分に届かない部分ができ、その部分が「苦しい!」と脳にサインを送ります。
脳はこれを「炎症が起きている」と判断し、結果として痛みを感じるようになります。

お腹を指で軽く押すと「ズーン」と痛む圧痛点が出やすい場所は、主に5ヶ所あります。
特に左下腹部は太くて長い血管が集まっているため、瘀血が起こりやすく、痛みを感じやすい部位です。

下腹部痛への鍼灸治療
婦人科系疾患をお持ちの方で、薬や手術で治る方もいらっしゃると思いますが、手術をしたくない方や経過観察により手術まで至らない方もいらっしゃいます。
そうした場合に、下腹部痛が出て辛いことがあります。
当院では、そういった婦人科系疾患のお悩みにも対応しています。
もちろん、症状やお身体の状態を診て、おなかだけでなく背中や手足にも鍼灸治療をします。

下腹部痛に効くおなかのツボ
おへその10cmくらい下に「関元(かんげん)」というツボがあります。
一般的に「丹田(たんでん)」と言われる場所です。
ここは、婦人科系や不妊の鍼灸治療でよく用いられるツボで、鍼をするのはもちろんですが、お灸で温めることもよくあります。
女性の子宮がある場所なので下腹部痛が強い場合、ここを温めてあげると痛みが和らぐことが多いです。

まとめ
現代は出産年齢の高齢化やストレス、生活習慣の乱れなどにより、婦人科系の不調で悩む女性が増えています。
下腹部痛の原因はさまざまですが、東洋医学では「瘀血(おけつ)」という血流の滞りが一因と考えられます。
血流が悪くなると酸素や栄養が行き届かず、その部分が痛みとして現れます。
鍼灸治療では、下腹部だけでなく背中や手足も含めて全身のバランスを整え、血流を改善して痛みを和らげます。
症状に応じて、ご自宅でできるお灸のアドバイスも行っています。