過敏性腸症候群に対する鍼灸

大事な仕事のときに限って…
通勤電車や満員電車に乗ると…
急な腹痛や下痢に悩まされる方は少なくありません。
この記事では、「過敏性腸症候群(IBS)」の特徴や原因、症状を整理しています。
そして鍼灸治療ついて、4タイプ(便秘型・下痢型・交替型・ガス型)それぞれへのアプローチとおすすめのツボを紹介しています。
もくじ
過敏性腸症候群とは?
過敏性腸症候群とは、検査をしても腸そのものに明らかな異常が見つからないにもかかわらず、
腹痛を伴う便秘や下痢、我慢できないほどのおならなどが
繰り返し起こる状態を指します。
特に、仕事中や授業中、満員電車など
「今は困る…」という場面に限って症状が出やすいのが特徴です。
そのため、日常生活を送るうえで大きなストレスや悩みの種になっている方も多くいらっしゃいます。

年齢の傾向としては、働き盛りである20代~50代に多くみられます。
真面目、几帳面、心配性、ナイーブな方がなりやすく、一度経験すると、またお腹が痛くなったらどうしよう…と不安に考えてしまい、それがストレスになって悪循環となります。
過敏性腸症候群の原因
ストレスと腸内環境が原因だと考えられています。
ストレスを感じると脳からセロトニンというホルモンが分泌されます。
セロトニンは幸せホルモンとも呼ばれストレスから体を守る働きがありますが、過剰に分泌されてしまうと腸の動きが活発になりすぎてしまうため、便意を催す腹痛や下痢が起こるのではと考えられています。

そして、腸内環境が悪くなることで腸が過敏になることがありますので、食生活の乱れにより悪玉菌が増えるなどの環境悪化による腹痛・下痢も考えられます。
主な症状と4タイプ
過敏性腸症候群の症状には個人差がありますが、代表的なものは次の通りです。
- 繰り返し起こる腹痛
- 便秘や下痢が続く、または交互に起こる
- 排便すると腹痛や不快感が和らぐ
- おならが頻繁に出る、我慢しづらい
- お腹が張る感じがする
- お腹がゴロゴロと鳴る
- 吐き気や食欲不振を感じることがある
症状の強さや現れ方には差があり、軽い違和感程度の方もいれば、
日常生活に支障をきたすほどつらい方もいらっしゃいます。
以上のような症状がありますが、大まかに四つのタイプに分けることができます。
①便秘型②下痢型③交互型④ガス型です。
① 便秘型
女性に便秘が多いのは、女性ホルモンの影響が関係しています。
生理前に分泌量が増えるプロゲステロンというホルモンには、
体に水分を溜め込む性質があります。
そのため、
- 便の水分が吸収されて硬くなりやすい
- 便秘になりやすい
- むくみやすくなる
といった状態が起こります。

そして今度は、「便秘を何とかしなければ」と感じた脳の働きによって、
生理が始まる頃になると便がゆるくなることがあります。
② 下痢型
1日に何度も下痢が出る下痢型は、女性よりも男性に多い傾向があります。
これは、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)
― 腸の内容物を肛門へ運ぶ動き ― が過剰に活発になることで起こります。
蠕動運動が活発になる原因はさまざまですが、たとえば以下のようなものがあります。
- ホルモンの影響
- ストレスや緊張
- 牛乳など、特定の食品への反応

③ 交替型
便秘と下痢を繰り返すタイプです。
硬い便が腸に引っかかっていても、その隙間を通って下痢が出たり、
しばらくすると今度は硬い便が出たりと、
- 便秘型
- 下痢型
両方の特徴をあわせ持った状態といえます。
④ ガス型
お腹にガスが溜まり、膨満感を感じたり、
頻繁におならが出るのが特徴です。
騒がしい場所ではあまり気にならないのに、
- 授業中
- 試験中
- 会議中
などの静かな環境になると、
我慢できないほどおならが出てしまい、
周囲の目が気になってしまう方も少なくありません。

鍼灸治療

鍼灸治療では、自律神経を整えるツボや、胃腸の働きに関わるツボに鍼やお灸を行っていきます。
鍼やお灸によるツボへの刺激は、神経を通じて脳へ伝わり、ホルモン分泌のバランスを整えながら、
脳と深い関わりのある腸へと作用していきます。
実際に、施術中から
- お腹の張りが楽になる
- 膨満感が軽減する
- 食欲が出てくる
など、胃や腸の感覚の変化を感じる方もいらっしゃいます。

治療を続けていくことで、少しずつ自律神経の乱れが整っていきます。
体調が安定してくると症状が出る頻度も減り、それが自信や安心感につながります。
この安心感が、さらに症状を起こりにくくする良い循環を生み出していきます。
鍼灸から見たタイプ別アプローチ
過敏性腸症候群は、同じ病名でも症状の現れ方や原因は人それぞれです。
鍼灸では、腸だけを見るのではなく、自律神経・ホルモンバランス・ストレスなど、全身の状態を踏まえてタイプ別にアプローチしていきます。
① 便秘型へのアプローチ
便秘型の方は、腸の動きが低下しやすく、体が緊張状態にあることが多くみられます。
- 自律神経を整え、腸の動きを促す
- 全身の緊張をゆるめる
- ホルモンバランスの影響を和らげる
おすすめのツボ

- 合谷(ごうこく):手の甲にあるツボで、自律神経の調整や全身の巡りを良くし、便秘を含む消化器症状に用いられる
鍼やお灸で体をゆるめ、自然に出せる状態を作っていくことを重視します。
② 下痢型へのアプローチ
下痢型の方は、腸が過剰に働きすぎており、交感神経が優位になっているケースが多くみられます。
鍼灸では、「抑える」「鎮める」方向の調整を行い、急な下痢が起こりにくい体づくりを目指します。
- 興奮している自律神経を落ち着かせる
- 腸の過剰な蠕動運動を穏やかにする
- 緊張しやすい体質をやわらげる
おすすめのツボ

- 足三里(あしさんり):胃腸の働きを整え、下痢や腹痛の調整に用いられる
③ 交替型へのアプローチ
便秘と下痢を繰り返す交替型は、自律神経の切り替えがうまくいっていない状態と考えられます。
- 自律神経のバランスを安定させる
- 腸のリズムを整える
- 体調の波を小さくしていく
おすすめのツボ

- 内関(ないかん):不安や緊張を鎮め、腹部症状を落ち着かせる
一時的な症状の改善だけでなく、体全体の安定感を取り戻すことを目的とした施術を行います。
④ ガス型へのアプローチ
ガス型の方は、ストレスや緊張によって無意識にお腹に力が入りやすい傾向があります。
鍼灸で体の緊張を取ることで、ガスの溜まりにくい状態へ導いていきます。
- 腹部や横隔膜まわりの緊張をゆるめる
- 自律神経を落ち着かせる
- 「気にしすぎる状態」をやわらげる
おすすめのツボ

- 太衝(たいしょう):ストレスによる緊張をゆるめ、自律神経を整える
まとめ
過敏性腸症候群は、腸そのものの異常ではなく、自律神経やストレス、ホルモンバランスが深く関係している症状です。
鍼灸治療では、体全体のバランスを整えながら、その方の症状タイプや体質に合わせた施術を行っていきます。
「いつ症状が出るか分からない不安」から解放され、日常生活を安心して過ごせるようになることを目標に、
一人ひとりに合わせたサポートを大切にしています。
















