多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)による不妊鍼灸治療

もくじ
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは
排卵障害の一つです。
卵巣で男性ホルモンが多く出てしまうために、卵胞の成熟に時間がかかってなかなか排卵しない疾患です。
自覚症状としては次のようなものがあります。
- 月経周期が35日以上
- 月経が不規則になる
- にきびが多い
- 多毛
- 肥満
PCOSでは、超音波で卵巣をみると10mm位の卵胞が外側に1列に並び、それ以上育たないことが特徴です。ネックレスサインと呼ばれます。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療
妊娠を希望しているかどうかで治療法が変わります。
妊娠を希望されない場合は、定期的に月経を起こす治療が必要です。ホルモン剤を用いて月経を定期的に起こし、子宮体がんなどのリスクを減らします。
妊娠を希望する場合は、排卵誘発剤を使った薬物療法が第1選択です。内服薬で効果がない場合、注射を行います。ただし、卵巣過剰刺激症候群に注意が必要です。
卵巣の膜が厚すぎる場合は、手術で膜に穴を開けることがあります。自然妊娠が難しい場合は体外受精に進むこともあります。
東洋医学からみた多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の原因
東洋医学では、婦人科疾患に関わる臓腑として「脾」が重要です。脾の機能低下がPCOSの原因の一つと考えられます。
卵胞が育ちにくく排卵できないのは、体質的な虚弱や瘀血(血の滞り)、痰湿(老廃物)が原因です。これらによって卵巣の膜が硬くなり排卵しにくくなります。そのため、「脾」の機能を高める鍼灸治療で体質改善を図ります。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に使うツボ
PCOSの改善には「太白」というツボを使います。足の親指の内側にあります。

太白は太陰脾経の原穴でお腹までつながっており、刺激により瘀血や痰湿の解消に役立ちます。婦人科系疾患によく用いられるツボです。
お灸をすると熱が腹部まで伝わり、冷えや瘀血、痰湿の改善につながります。
太白のツボの取り方とセルフお灸
太白は足の親指の付け根にある関節の内側にあります。外反母趾の方は出っ張りの下のくぼみが目印です。
皮膚の下にすぐ骨があるため鍼では痛みやすく、お灸がおすすめです。自宅でのセルフお灸のツボとしても有効です。
婦人科系だけでなく胃腸の調子を整える作用もあります。
まとめ
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は卵胞が育ちにくく排卵しにくい排卵障害の一つです。
妊娠を希望する場合は排卵誘発剤を使用します。
東洋医学的には「脾」の機能低下や瘀血・痰湿が関わり、鍼灸治療で体質改善を行います。