メニエール病に鍼灸は効果がある?症状緩和への可能性と注意点

この記事では、メニエール病に対する鍼灸の作用やその効果の可能性と注意点をわかりやすくご紹介します。
もくじ
メニエール病とは?
メニエール病は、耳の中にある内リンパ液の過剰な蓄積が原因とされる病気です。
- グルグル回るようなめまい(回転性めまい)
- 耳鳴り、耳の詰まり感(耳閉感)
- 難聴(特に低音域)
- 吐き気やふらつき
症状は繰り返し起こることがあり、日常生活に支障をきたすこともあります。
鍼灸はメニエール病に効果があるの?
鍼灸はメニエール病による症状の軽減や再発予防を目指すケア方法です。
鍼灸は、めまいや耳の詰まり感、耳鳴りなどメニエール病に伴うつらい症状をやわらげる効果が期待されます。実際に「めまいが軽減した」「発作の回数が減った」「体調の波が安定した」と感じる方も多く、臨床例も多く報告されています。
ただし、体質や症状の程度によって効果のあらわれ方には差があり、効果に個人差はあります。
そのため、薬や生活習慣の見直しとあわせて取り入れることで、より安定した体調づくりをサポートする方法として選ばれています。
鍼灸で効果のある例では、
- めまい症状の軽減
- 耳鳴りや耳閉感の頻度・強さの減少
- 自律神経のバランス調整による体調が改善
- 首肩こりが軽減し、めまいも改善
などがあります。
鍼灸で期待される作用
1. 自律神経のバランスを整える
めまいやふらつきは、ストレスや疲れがたまって「自律神経」の働きが乱れることで起こることがあります。自律神経は体のリズムや血流をコントロールする大事な役割を持っています。鍼灸はツボを刺激することで「リラックスモード」の神経を活発にし、体の緊張をゆるめて血のめぐりを良くすると言われています。こうした働きによって、めまいが出にくい状態に近づけることが期待できます。
2. 血流促進・リンパ循環のサポート
鍼灸でツボを刺激すると、首や肩、耳のまわりの血流が良くなります。血のめぐりが良くなると、内耳にたまった余分な水分(リンパ液)や老廃物が流れやすくなり、耳のむくみがやわらぎます。その結果、耳の詰まった感じやふらつきが軽くなることがあります。
3. 首や肩のこわばりをゆるめる
首や肩がこっていると、頭や耳の血流が悪くなり、めまいや耳鳴りが強く出やすくなります。鍼灸は奥の方の筋肉まで届くので、普通のマッサージではほぐしにくいコリもやわらげることができます。筋肉がほぐれると血流も良くなり、体が軽く感じられるほか、気持ちも落ち着きやすくなります。
2024年に発表されたシステマティックレビュー(複数の質の高い研究をまとめた報告)では、
鍼灸単独または鍼灸と耳鼻科などの治療を併用した場合、耳鼻科などの治療のみの場合と比べて、めまい(DHI)、耳鳴り(THI)、耳閉感(VAS)、聴力(純音聴力検査)のすべてで有意な改善がみられたと報告されています。
ただし、研究ごとにツボの場所、治療期間、研究方法などの条件が違うので、結果をそのまま一つの結論として断定するのは難しい、という課題もあるとされています。
(出典:Frontiers in Medicine, 2024)
実際にどんな人が鍼灸を試している?
- 薬を使っているがめまい症状などが残る人
→めまいや耳鳴り、耳の詰まり感などが薬で一時的に軽減しても、完全には治まらず再発を繰り返す - 長年症状があるが、原因がはっきりしない人
→検査や治療を受けても明確な原因が見つからず、「なんとなく体調が悪い」状態が長く続く - 病院の検査では異常が見つからず、体調全体を整えたい人
→西洋医学的な診断では問題なしとされても、自覚症状が強く、体質改善や体調を整えたい - 首肩こりやストレス、冷え、不眠など他の不調も同時にある人
→メニエール病の症状と同時に、首肩こり、自律神経の乱れや血流不良などで、様々な不調がある
こうした方々は、「めまいそのもの」だけでなく、その背景にある首肩こり、自律神経の乱れ・血流やリンパの滞り・体質も改善できる鍼灸を選ぶ傾向があります。
鍼灸施術の流れと特徴および注意点
メニエール病によるめまいのある方は、多くの場合、首・肩・背中に強いコリがみられます。
まずはこのコリを鍼灸で緩めて、頭部や内耳への血流循環を促進させることで、めまい症状の軽減を目指します。
続いて、自律神経の乱れを整える施術を行います。
メニエール病の方は、手足の冷えや全身の緊張を伴うことが多いため、手足背中など、自律神経を調整するツボにも鍼やお灸を施し、体全体のバランスを整えていきます。
当院では週1〜2回の施術を基本とし、症状の経過に合わせて期間や回数を調整します。
さらに、ご自宅でのセルフケアとしてお灸を取り入れていただくことで、効果の持続と体質改善を図ります。
こうした局所の血流改善と全身のバランス調整を組み合わせることで、めまいの再発予防や日常生活の快適さ向上をサポートします。
■注意点
- 鍼灸はメニエール病の症状緩和に一定の効果が期待できますが、すべての方に改善が見られるとは限りません。
- あくまで補助的なケアであり、必ず医師による診断・治療を受けたうえで併用してください。
- めまいが急に強くなった場合や、吐き気・頭痛を伴う場合は、直ちに医療機関を受診してください。
よく使われるツボの例
- 風池(ふうち):首のうしろ。頭や耳まわりの血流改善に
- 百会(ひゃくえ):頭頂。自律神経のバランスを整える
- 内関(ないかん):手首内側。吐き気やめまいの緩和に
- 太衝(たいしょう):足の甲。ストレス緩和や全身の巡りに
メニエール病でよく使わるツボです。鍼灸治療は個人の状態によって使うツボは多少異なります。
このようなツボに指圧やお灸を取り入れたセルフケアも可能です。ツボが分からない時は鍼灸師に相談しましょう。
まとめ|鍼灸は“補助的な選択肢”の一つ
鍼灸はメニエール病そのものを治す治療ではありませんが、「めまいが軽くなった」「耳鳴りの程度が軽くなった」「耳の詰まりが軽減した」と感じる方がいます。
- 薬だけでは十分にコントロールできないとき
- ストレスや自律神経の乱れも気になるとき
- 体質を整えながらじっくり向き合いたいとき
- 首肩こりがひどく、それが原因と考えられるとき
そんな場合には、病院の治療と併用して、鍼灸治療も検討されてみてはいかがでしょうか。