坐骨神経痛に鍼灸は効果ある?改善が期待できる理由と施術内容・期間
坐骨神経痛に鍼灸は効果ある?改善が期待できる理由と施術内容・期間
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坐骨神経痛に鍼灸は効果ある?改善が期待できる理由と施術内容・期間

坐骨神経痛の鍼灸治療について

坐骨神経痛によるお尻や足の痛み・しびれがなかなか良くならず、鍼灸を検討している方も多いのではないでしょうか。

この記事では、
「坐骨神経痛に鍼灸は本当に効果があるの?」
「改善するにはどんな治療をするの?」
「どれくらいの期間で良くなるの?」
といった疑問に対して、鍼灸の仕組みや施術の流れを交えながら、わかりやすく解説します。

坐骨神経痛とは?主な症状と原因

坐骨神経痛のよくある原因
坐骨神経痛とは、お尻から太もも、ふくらはぎ、足先にかけて広がる痛みやしびれなどの神経症状の総称です。
原因にはさまざまなものがあります。

よくある原因

  • 筋筋膜性疼痛症候群
    筋肉や筋膜にできたトリガーポイント(コリ)が原因で、関連する部位に痛みが広がる
  • 梨状筋症候群
    お尻の奥の筋肉が硬くなり、坐骨神経を圧迫
  • 腰椎椎間板ヘルニア
    椎間板が飛び出し、神経を圧迫
  • 脊柱管狭窄症
    加齢により神経の通り道が狭くなり、神経が刺激される

原因によって治療法が異なるため、原因の見極めが重要です。

坐骨神経痛に対する鍼灸の3つの働き

結論から言うと、坐骨神経痛の症状緩和や改善を目指す方法の一つとして、鍼灸は効果が期待される治療法です。

鍼灸が効果をもたらすとされる理由

  • 血行促進・筋緊張の緩和
    鍼によって筋肉や筋膜に直接刺激を与えることで、血流を促し、痛み物質の排出や筋緊張の緩和をサポートします。
  • 神経の興奮を抑える
    過敏になった神経の反応を穏やかにする効果が期待されており、しびれや痛みの軽減につながるケースもあります。
  • 自律神経の調整
    坐骨神経痛はストレスや自律神経の乱れが関与する場合もあります。鍼灸は、交感神経・副交感神経のバランスを整える作用があるとされています。

近年の臨床研究では、鍼灸が坐骨神経痛の痛みや機能障害を改善することが示されています。例えば、

  • 2024年に国際的医学誌に掲載された多施設ランダム化試験では、4週間で10回の鍼治療により下肢痛が有意に軽減し、その効果は1年後まで持続しました。
  • 2019年の研究でも、4週間の鍼治療で週あたりの下肢痛スコアが臨床的に意味のある水準まで改善する結果が得られています。
  • さらに複数のメタ解析(過去のたくさんの研究をまとめて分析した結果)でも、鍼灸は鎮痛薬と比べて痛みを和らげる効果や安全性において優れている可能性が示されています。

出典:Tu JF et al., JAMA Internal Medicine. 2024
出典:Huang Z et al., Pain Medicine. 2019
出典:Zhang Z et al., Frontiers in Neuroscience. 2023

鍼灸ではどんな治療をするの?

坐骨神経痛の鍼灸治療のようす

  • 痛みのある部位と原因部位を両方ケア
    お尻や太もも、ふくらはぎなど症状が出ている箇所に加え、原因となっている可能性のある腰や骨盤周辺にもアプローチ。鍼を刺す深さや本数は症状に応じて調整されます。鍼が原因となっている部分に入ると、独特の響き(おもだるさ)を感じることが多いです。
  • お灸との併用も
    血行をさらに良くする目的で、お灸を併用する場合もあります。温熱刺激によって筋肉が緩み、神経への負担が軽減されることもあります。

鍼灸の効果を実感できるまでの期間は?

坐骨神経痛の効果が出るまでの目安

同じ症状や原因でも鍼灸による効果の出方は人によって異なりますが、目安となる施術回数・期間があります。

一般的な傾向

  • 1〜5回で軽減を感じる(軽症・梨状筋症候群や筋筋膜性症候群など)
  • 数回〜10回の施術で症状が改善することが多い(軽度の椎間板ヘルニアなど)
  • 10回以上の施術を重ねることで、症状に変化が見られ始めることが多い(中度以上の椎間板ヘルニアなど)
  • 重症・慢性の場合は症状がやわらぐまで3か月〜半年以上かかることも(脊柱管狭窄症など)

頻度としては、最初は週1〜2回ほど、症状が安定してきたら週1回程度に。
その後は再発予防を兼ねて、月1〜2回のメンテナンス通院が推奨されることもあります。

坐骨神経痛の鍼灸治療の典型的な例

坐骨神経痛は原因、症状の程度などによって、効果に個人差が出ますが、典型的な例をいくつかご紹介します。

筋筋膜性疼痛症候群(トリガーポイント)・梨状筋症候群

症例1:30代男性
1週間前にぎっくり腰を発症。腰の痛みは数日で軽くなったものの、その後徐々にお尻や太もも、ふくらはぎ外側へと痛みが移動し、しびれも伴うようになった。
鍼灸治療では、腰からお尻にかけての強いコリ(トリガーポイント:痛みやしびれを広範囲に飛ばす原因となる硬結)を狙って鍼を施術。
翌日には痛みとしびれがほぼ消失し、日常生活がスムーズに行えるようになった。

症例2:40代男性
2か月前から右のお尻から太もも裏にかけて鈍痛が出現。レントゲン、MRIでは異常はなく、梨状筋症候群が疑われた。
座ったり立ったりする際に痛みが強く、長時間のデスクワークや運転が多い生活習慣が影響していると考えられた。
鍼灸施術を開始し、1回目は施術直後に右脚が重く感じたが、その後軽減。
2回目で痛みが7〜8割改善し、3回目でほぼ消失。短期間で日常生活に支障なく過ごせるようになった。

腰椎椎間板ヘルニア

症例1:30代男性
腰を前に曲げると鋭い痛みと右脚のしびれ。MRIで椎間板ヘルニアと診断。
週1〜2回の鍼灸で腰部の筋緊張を緩和。8回目で長時間の座位でも耐えられるようになり、2か月で症状が大幅改善。

症例2:40代女性
抱っこや前かがみで痛み増悪。臀部から太もも裏への放散痛。
初回施術で血流改善による温感を自覚。10回の施術で夜間痛が軽減し、子供の抱っこも支障なく行えるように。

脊柱管狭窄症

症例1:70代男性
300m歩くとふくらはぎがしびれて休まざるを得ない(間欠性跛行)。
腰・殿部への鍼灸で循環を改善。鍼灸治療5回で歩行距離が800mに延長。
週1〜2回の施術を2か月継続で、痛みやしびれはあるが旅行にも行ける程度まで改善。

症例2:60代女性
週1回の治療を継続したところ、初めの1か月は症状に大きな変化は見られなかったが、2か月目頃から歩行距離が少しずつ延長。
3か月経過後には約1km程度を休まず歩けるくらいにまで改善。
週1回ペースでも数か月単位で改善が見られた。

症例3:60代男性
15年前に軽いヘルニアと診断される。3年前から痛みとしびれが悪化し、整形外科で「骨の老化による変形性脊椎症」と診断。
数十メートル歩くと両足がしびれて歩けず、杖をついて来院。
週2回の鍼灸を継続し、1か月後には痛みが軽減、杖が不要に。
その後も一進一退を繰り返しながら改善し、半年・30回の施術でほぼ痛みが消失。
施術終了から半年後も再発なく安定している。

鍼灸のメリットと注意点

鍼灸のメリット

  • 痛み止めに頼らずに緩和を目指せる
  • 根本的なバランス調整(筋肉・神経・血流など)が期待できる
  • 副作用が少なく、身体への負担が少ない

注意点

  • 鍼灸の効果は原因や体質によって個人差があります。
  • 特に椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など構造的な(骨などの変形など)問題に対しては、鍼灸の効果は限界があります。そのため、必要に応じて整形外科などでの治療が大切です。

まとめ|坐骨神経痛の改善には鍼灸という選択肢も

坐骨神経痛の原因は人それぞれで、痛みやしびれの程度も異なります。鍼灸は、坐骨神経痛の痛みやしびれに対して、筋肉の緊張緩和や神経の過敏抑制、血流促進などを通じて症状の改善をサポートできる治療法のひとつです。

構造的な疾患(骨などの変形など)がある場合には限界もありますが、痛みの緩和や再発予防を目的としたケアとして、鍼灸を取り入れる方も多くいらっしゃいます。

坐骨神経痛に悩んでいる方は、ぜひ一度、鍼灸院にご相談されてみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

この記事の執筆者:医学博士・鍼灸師 箱嶌大昭

医学博士・鍼灸師 箱嶌大昭(はこしま ひろあき)

東洋医学の本場、中国・北京にて日本人初の医学博士を取得後、福岡・天神にて「中国鍼灸院 箱嶌医針堂」を開業。福岡県内をはじめ、九州各県から多くの患者が来院。肩こり、腰痛など日常的な症状から慢性的な神経痛、自律神経失調症、難病などの鍼灸治療を行っている。

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