坐骨神経痛の原因となる筋肉とは?|福岡天神・中国鍼灸院
坐骨神経痛の新常識:深部殿筋症候群と梨状筋症候群

坐骨神経痛の新常識:深部殿筋症候群と梨状筋症候群

坐骨神経痛のイメージ画像

坐骨神経痛は、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などが原因とされることが多いですが、実は腰やお尻、太もも裏の筋肉が硬くなることでも起こります。

レントゲンやMRIで「骨に異常はない」と診断された場合でも、筋肉が原因で坐骨神経が圧迫されているケースが少なくありません。また、椎間板や脊柱管に異常があっても筋肉の緊張が重なり、症状を悪化させることがあります。

鍼灸施術では硬くなった筋肉を緩め、血流を改善することで痛みやしびれをやわらげることができます。ここでは、坐骨神経痛に関わる代表的な筋肉をご紹介します。

この記事の概要: 坐骨神経痛は骨や神経の問題だけでなく、筋肉の緊張も大きな原因となります。深部殿筋症候群をはじめ、腰やお尻の筋肉が坐骨神経を圧迫し症状を引き起こすことがあります。本記事では、主要な原因筋肉とその特徴を解説します。

深部殿筋症候群とは

最近、坐骨神経痛の原因として注目されているのが深部殿筋症候群(Deep Gluteal Syndrome)です。これは、殿部の奥深くにある筋肉や靱帯の緊張や圧迫によって坐骨神経が刺激され、痛みやしびれが出る状態を指します。

従来は椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が原因と考えられることが多かったのですが、最近の研究や臨床経験から、筋肉性の要因が大きく関わっているケースがあることが分かってきました。

特にお尻や太もも裏に関連する筋肉が硬くなると、坐骨神経を直接圧迫し、腰から足にかけて強い症状を引き起こすことがあります。以下では、実際に坐骨神経痛の原因となりやすい中小殿筋や梨状筋、大腰筋などの筋肉について詳しくご紹介します。

  • 中殿筋・小殿筋・腰方形筋
  • 梨状筋・大腰筋
  • ハムストリング・脊柱起立筋
  • 上下双子筋・閉鎖筋

深部殿筋症候群は比較的新しい概念で、近年の臨床研究でも注目されています。特に梨状筋を含む殿部深層筋による坐骨神経の圧迫が主要因とされています。
出典:Martin HD et al., Journal of Hip Preservation Surgery. 2015(Deep gluteal syndrome 総説)

深部殿筋症候群と梨状筋症候群のちがい

深部殿筋症候群(DGS)は、お尻の奥にある複数の筋肉や靱帯が坐骨神経を圧迫して起こる症状の総称です。梨状筋だけでなく、中殿筋・小殿筋・双子筋・閉鎖筋なども関わるのが特徴です。

梨状筋症候群は、その中でも特に梨状筋が原因で神経を圧迫する状態を指します。お尻の中央から太もも裏にかけて、痛みやしびれが出やすいのが特徴です。

つまり、梨状筋症候群は深部殿筋症候群の一部に含まれる疾患であり、「特定の筋肉(梨状筋)の問題」か「より広い範囲の深部筋群の問題」かという違いがあります。

当院でも、梨状筋症候群と診断された方の多くは梨状筋だけでなく周囲の筋肉も硬くなっていることが多く、梨状筋を含めた殿部全体の筋肉に鍼治療を行うことで症状の軽減がみられるケースが多くあります。

※表は横にスクロールしてご覧いただけます

深部殿筋症候群と梨状筋症候群の違い
項目 深部殿筋症候群(DGS) 梨状筋症候群
原因筋肉 複数の深部殿筋(中殿筋・小殿筋・双子筋・閉鎖筋など) 梨状筋のみ
症状の範囲 お尻〜太もも裏〜ふくらはぎまで広く出やすい お尻の中央〜太もも裏が中心
特徴 新しい概念として注目されている。症状が多様 古くから知られる疾患。典型的な坐骨神経痛症状
関係性 総称(包括的な概念) DGSの一部(特に梨状筋が原因のケース)

中小殿筋・腰方形筋

中殿筋、小殿筋、腰方形筋

お尻から太ももの外側・後ろ側、さらにふくらはぎや足の前側にかけて、痛みやしびれを感じることがあります。

中殿筋・小殿筋に問題があると、腰方形筋にも負担がかかりやすく、坐骨神経痛と腰痛が同時に出ることがあります。特にスポーツ中のケガや転倒、物を支えようとした動作で痛めやすい筋肉です。

立っていると平気でも、座ると骨盤の上のあたりに痛みやしびれが出るのが特徴です。お尻の上部を押すと痛みがあり、無意識に手で揉んでしまうこともあります。

腰方形筋は、床から物を持ち上げるときや、長時間体を曲げたりねじったりしたときに負担がかかりやすい筋肉です。そのため、立ち上がる・座るといった日常の動作で痛みが出ることがあります。

梨状筋・大腰筋

梨状筋、大腰筋

梨状筋が硬くなると、坐骨神経の通り道で圧迫が起こり、お尻の中央から太ももの後ろ、症状が強い場合には足裏やつま先まで痛みやしびれが広がります。冷えや強いしびれを伴うことも少なくありません。

大腰筋に問題があると、背筋をまっすぐに伸ばすのが難しくなり、体を丸める姿勢のほうが楽に感じます。座っていると落ち着きますが、立ち上がるときに痛みが出やすいのが特徴です。

大腰筋は急な運動や物を持ち上げる動作、長時間の車の運転、スポーツのケガなどで傷めやすい筋肉です。ぎっくり腰や慢性的な腰痛、椎間板ヘルニアに関わっていることも多くあります。

ハムストリング・脊柱起立筋

ハムストリング

お尻と太ももの境目あたりから、太ももの後ろ・膝の裏・ふくらはぎ、さらにはアキレス腱付近まで痛みが出ることがあります。特に中高年で前屈がしづらい腰痛の背景に、この筋肉の緊張が隠れていることがあります。

スポーツによるケガや、長時間座りっぱなしの生活習慣によっても傷めやすく、症状が出やすい筋肉です。

上下双子筋・閉鎖筋

双子筋、閉鎖筋

お尻の下のほうから太ももの後ろの中央にかけて、鈍い痛みを感じることがあります。比較的深い位置にある筋肉ですが、坐骨神経を圧迫することで症状を引き起こします。

まとめ

坐骨神経痛は「骨や神経の異常=原因」と思われがちですが、実際には筋肉の緊張が関わっていることも多くあります。

深部殿筋症候群をはじめ、中小殿筋・梨状筋・大腰筋などの筋肉が坐骨神経を圧迫することで、腰から足にかけての痛みやしびれが現れるのです。

筋肉を緩め血流を整える鍼灸施術は、このようなタイプの坐骨神経痛に有効なアプローチとなります。

この記事を書いた人

箱嶌 大昭(医学博士・鍼灸師)

医学博士・鍼灸師 箱嶌 大昭(はこしま ひろあき)

中国・北京にて日本人初の医学博士を取得後、福岡・天神で「中国鍼灸院 箱嶌医針堂」を開業。肩こり・腰痛などの一般症状から、自律神経失調症や気象病による体調不良まで幅広く診療。

「気象病・天気痛は鍼灸で改善が期待できます。お気軽にご相談ください。」院長の経歴・あいさつ


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